2015年11月28日豊川医歯薬連携講演会

11月28日豊川市民プラザにて「骨粗鬆症治療と顎骨壊死を考える」と題して豊川医歯薬連携講演会が開催されました。

歯科においてはビスフォスホネート製剤服用患者における顎骨壊死が問題となる中での講演会となりました。講演会前半では 高橋育太郎先生(豊川市民病院 整形外科部長)による「当科における骨粗鬆症の治療方針とその現状」と題しての講演。

骨粗鬆症治療は骨折の予防を主な目的とする治療であり、しかも薬を長期に渡り服用する必要があるので、患者さんの理解を得ることが難しいとのこと。これは歯科における、むし歯・歯周病の予防の必要性を理解して頂くことが難しいことと似ているように感じました。予防は難しいですね。骨粗鬆治療薬はビスフォスホネート製剤とは異なる作用メカニズムを持つ薬剤も多くあり、患者さんの症状・年齢・ライフステージに応じて薬剤を選択するとの事でした。興味深かったのは作用の強い薬剤をあえて投与せず、将来に来るべきタイミング(患者さんにとって最も骨折予防が必要な時期)までとっておくこともあるとのことです。

その後、鈴木慎太郎先生(豊川市民病院 口腔外科部長)による「当科における薬剤関連顎骨壊死の現状と治療」と題しての講演がありました。先だって、口腔外科学会をはじめとする骨代謝に関係する5学会が作成した「ビスフォスホネート関連顎骨壊死に対するポジションペーパー」が配布されその説明がありました。近年はビスフォスホネート製剤のみならず他の骨粗鬆症治療薬剤でも顎骨壊死の報告があるとのこと。そして、実際の顎骨壊死の症例が多数のスライド写真と共に報告されました。実際の症例写真を目にすると、顎骨壊死の重大さを強く実感します。そしてその治療の困難さも。口腔外科の先生方がいかに大変な思いで治療に当たっているのかが、スライドと共に伝わってきます。骨粗鬆症の患者人口を考えると、今後多くの新薬が開発されることでしょう。ポジションペーパーによれば、「破骨細胞をターゲットとする薬剤」は顎骨壊死を引き起こす可能性があるとのことです。つまり治療薬が「骨吸収を抑制するもの」であるならば、その新薬としての強い作用機序により顎骨壊死のリスクは高まると考えられます。しかしながら、リスクが高まったとしても、骨粗鬆症治療薬による顎骨壊死には「感染」というトリガーが必要です。これは二人の講演者の先生の共通のコンセンサスとのことです。そのため、今後われわれ歯科では骨粗鬆症治療薬の作用機序を理解し、歯科治療でそのトリガーを引かないように、今まで以上に口腔内の感染予防に注意を払う必要があるのではないでしょうか? (山本洋平)

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